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みどり摘みってなに?松のお手入れに欠かせない作業とは?

庭にある松の木。風格のある姿が日本庭園の顔ともいえる存在ですが、その美しさを保つためには、定期的なお手入れが欠かせません。中でも「みどり摘み(芽摘み)」は、松の健康と美観を維持するうえでとても重要な作業です。

この記事では、園芸に興味のある方に向けて、みどり摘みとは何か、どんな効果があるのか、具体的な作業方法や時期について、わかりやすくご紹介します。

 

みどり摘みとは?

「みどり摘み」とは、春から初夏にかけて新しく伸びた松の若芽(新芽)を摘み取る作業のことです。

松は放っておくと枝が混み合い、見た目が乱れたり、風通しが悪くなったりします。みどり摘みは、そうした混雑を防ぎ、松の枝ぶりや樹形を整える目的で行われる伝統的な手入れ方法です。

一般的に、黒松や五葉松、赤松といった品種で実施されます。とくに庭園に植えられた松や盆栽の松では欠かせない作業とされています。

なぜ「みどり摘み」が必要なのか?

枝の混雑を防ぐ

松は新芽が毎年複数本ずつ伸びていきます。そのまま伸ばしてしまうと、枝が混み合い、日光が当たりにくくなったり、蒸れて病気になりやすくなったりします。

みどり摘みをすることで、余分な芽を間引き、枝の通風・採光を確保します。

美しい樹形を保つ

みどり摘みを繰り返すことで、松の枝ぶりを整え、均整のとれた美しい姿に仕上げることができます。まさに庭の「彫刻」のように、一本の松を育て上げる楽しさが味わえます。

エネルギーの集中

みどり摘みで芽数を制限することにより、木全体のエネルギーが選ばれた芽に集中します。その結果、元気な枝が育ちやすくなり、翌年の成長も良好になります。

みどり摘みの適期はいつ?

みどり摘みの時期は、地域やその年の気温にもよりますが、おおむね「5月上旬から6月中旬」が目安です。

ポイントは、「みどり(新芽)」がまだ柔らかく、指でつまんで簡単に折れる時期に行うこと。芽が硬くなると手で摘みにくくなり、枝を傷つけてしまう恐れがあります。

関東地方では5月中旬〜下旬、東北地方では5月下旬〜6月上旬、九州地方では4月下旬から始めるのが一般的です。

みどり摘みの具体的なやり方

1. 摘み取る芽の選定

基本的に1つの枝から出るみどり(新芽)は2〜3本以上になることが多いです。このうち、形の良い1〜2本だけを残し、他は指先で摘み取ります。

選ぶ際は、

  • 上向きよりも横向きの芽

  • 元気で太すぎない芽

  • 全体のバランスを考慮した芽

を優先して残します。

2. 手でやさしく摘み取る

ハサミを使わず、基本的には指先でつまんで軽く引き抜きます。芽の元からポキッと折れる感覚がある程度が理想です。

芽を残しすぎると枝が密になり、少なすぎると翌年の芽吹きが減るため、バランスよく間引くことが大切です。

3. 全体の形を整える

1本ずつ丁寧に摘み進めながら、全体のシルエットを確認しましょう。上部だけでなく側面や下部にも目を配り、バランスの良い仕上がりを目指します。

みどり摘みと「芽切り」との違い

松の手入れには「芽切り(芽摘み)」という作業もあります。どちらも新芽に関する作業ですが、行う時期や目的が少し異なります。

  • みどり摘み:春〜初夏の新芽を整える(5〜6月)

  • 芽切り:夏の終わりごろに2番芽を促すために芽を切る(7〜8月)

芽切りは盆栽に多く使われる手法で、短い芽を出させることで密な枝ぶりを作る効果があります。一方、庭木では主にみどり摘みが行われます。

松の種類とみどり摘みの違い

松にもさまざまな種類がありますが、代表的な3種について、みどり摘みの考え方を紹介します。

黒松

黒松は成長が旺盛で、放っておくと枝が混みやすくなります。芽数も多いため、みどり摘みは丁寧に行う必要があります。特に庭木や大型盆栽では必須の手入れです。

赤松

赤松は黒松よりもやや繊細で、芽数も少なめです。みどり摘みもやさしく行い、枝の形を意識しながら進めましょう。

五葉松

五葉松は比較的成長が遅く、芽の数も少ないです。場合によってはみどり摘みをしなくても樹形を保てますが、密になっている箇所は間引きすると良いでしょう。

よくある疑問Q&A

Q. 全部の芽を摘み取っても大丈夫ですか?

A. いいえ。全ての芽を摘んでしまうと、翌年の芽吹きが極端に少なくなり、木のバランスが崩れます。1つの枝に1〜2本程度は残すようにしましょう。

Q. 手ではなくハサミで切ってもいいですか?

A. 基本的には指で摘むのが理想ですが、どうしても折れにくい場合や細かい調整が必要なときはハサミを使っても問題ありません。ただし、切り口が傷にならないように清潔な刃物を使ってください。

Q. 年に何回行う必要がありますか?

A. みどり摘みは年1回が基本です。ただし樹勢の強い黒松などは、必要に応じて夏〜秋にかけて軽い剪定や芽切りを併用することもあります。

まとめ

松の手入れというと難しそうに感じるかもしれませんが、みどり摘みはその中でも比較的やさしく始められる作業です。やればやるほど木の変化が目に見えて楽しくなり、愛着も深まります。

「松は庭の王様」ともいわれる存在。その風格ある姿を長く保つために、ぜひみどり摘みにチャレンジしてみてください。

 

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