芝生の「目土」と「施肥」はいつやる?
きれいな芝生を維持するために欠かせない春と秋の手入れが「目土(めつち)」と「施肥(せひ)」です。これらは芝生の健康を守る重要なメンテナンスですが、行う時期や量、手順を誤ると、かえって芝生を弱らせてしまうこともあります。
本ブログでは、造園のプロの視点から、芝生の目土と施肥の正しいやり方、最適な時期、適切な資材選びまで、失敗しないためのポイントを分かりやすく解説します。
芝生の手入れ「目土」とは?
目土とは、芝生の上から砂や土を薄くかける作業のことです。一見地味ですが、芝生の健康な生育環境を整えるために非常に重要な役割を持っています。主な役割は、生育や踏圧によって生じた地面の「凹凸(でこぼこ)を平らにする」ことです。これにより水たまりや刈りムラを防ぎます。
また、芝生の根元に土をかけることで乾燥を防ぎ(保湿)、地温の変化を和らげます(保温)。さらに、芝生の茎の部分が土に埋まることで、そこから新しい根が出る(発根)のを促す効果もあります。
サッチ(枯芝)の分解を促す
目土には、芝生の根元に溜まった刈りカスや古い枯れ葉の層である「サッチ」の分解を促す重要な効果もあります。サッチが溜まりすぎると水や空気が根に届かず、病害虫の原因になります。目土を入れることで、土中の微生物がサッチに触れやすくなり、その分解を助けます。
芝生の手入れ「施肥(肥料やり)」とは?
施肥は、芝生のための「食事(栄養補給)」です。芝生も植物であるため、成長には栄養が必要です。特に芝生は定期的に「刈り込み」で葉を失うため、失った分の栄養を補給しないと弱ってしまいます。
芝生の肥料には主に3つの要素があり、季節によって必要なバランスが異なります。
N=窒素:葉や茎の成長を促し、緑色を濃くする「葉肥(はごえ)」。
P=リン酸:主に「根」の成長を助ける「実肥(みごえ)」。
K=カリウム(カリ):根を丈夫にし、病気や暑さ・寒さへの抵抗力を高める「根肥(ねごえ)」。
春は葉を伸ばすために窒素(N)が多く必要であり、秋は冬越しと根を強くするためにリン酸(P)やカリウム(K)が多く必要です。
【春の手入れ】目土と施肥の時期と手順
春の手入れは、冬の休眠から芝生を目覚めさせ、一年間の成長をスタートさせる重要な作業です。
時期:3月下旬~5月上旬
最適な時期は、冬に休眠していた芝生が再び活動を始める3月下旬から5月上旬頃です。気温が安定して15℃〜20℃になり、芝生がうっすらと緑色に変わり始めたら作業開始のサインです。
春の目的:芽出しの促進とダメージ回復
春の作業の主な目的は、冬の間に受けたダメージ(寒さや霜柱による根の浮き上がり)をリセットし、これからの生育を促すことです。地温を安定させ、新しい芽が出やすい環境を整えます。
春の手入れの手順
春の目土と施肥は、芝刈りやサッチ除去とセットで行うと最も効果的です。
- 芝刈りとサッチ除去
まず芝刈り機で、芝生を通常より少し短め(低め)に刈り込みます。次に、熊手(レーキ)などで地表に溜まったサッチをしっかりとかき出します。この下準備で、肥料や目土が根元まで届きやすくなります。 - 施肥(肥料やり)
春は、窒素(N)成分が多めに配合された肥料(例:N-P-K比率が「10-10-10」など)を選びます。1㎡あたり30〜40g程度を目安に、肥料散布機(スプレッダー)などを使って全体に均一に散布します。ムラがあると肥料焼け(枯れ)の原因になるため注意しましょう。 - 目土
施肥の上から目土を撒きます。肥料が固定され、雨などで流れるのを防ぐ効果があります。 - ならしと散水
トンボやレーキの裏側で撒いた目土を平らにならします。最後に、目土と肥料を落ち着かせるために、たっぷりと水やり(散水)をして完了です。
【秋の手入れ】目土と施肥の時期と手順
秋の手入れは、夏のダメージを回復させ、厳しい冬越しの準備をさせるための「来年への投資」です。
時期:9月中旬~10月中旬
夏の猛暑が過ぎ、気温が下がって芝生の生育が再び活発になる9月中旬から10月中旬が適期です。夏の高温と乾燥で弱った根を回復させる絶好のタイミングです。
秋の目的:根の強化と冬越し準備
秋の作業の目的は、冬の寒さや霜から根を守ること、そして冬の休眠期に入る前に根をしっかり張らせ、栄養を蓄えさせることです。秋に根を強化しておくと、翌春の芽吹きが格段に良くなります。
秋の手入れの手順
基本的な手順は春と同じ(芝刈り → サッチ除去 → 施肥 → 目土 → 散水)です。
ただし、使用する肥料が異なります。秋は、葉の成長を促す「窒素(N)」は控えめにします。この時期に窒素が多すぎると、冬前に葉が伸びすぎて寒さで傷みやすくなります。
秋に必要なのは、根を太らせる「リン酸(P)」と、耐寒性を高める「カリウム(K)」です。N-P-K比率が「5-10-10」や「3-10-10」など、PとKの比率が高い、いわゆる「秋肥」タイプの肥料を選びましょう。
目土の「厚さ」と「資材」の選び方
【重要】失敗しない目土の厚さ
目土で最も多い失敗が「厚くかけすぎ」です。 全面に均一に撒く場合、厚さは3mm〜5mm程度を目安にし、芝生の葉先が隠れるか隠れないか程度に留めてください。元の本文にあるような「1cm」といった厚さで全面を覆ってしまうと、芝生が土に埋もれて光合成ができなくなり、「窒息」して枯れてしまう危険性が非常に高いです。
厚さ1cmもの土をかけるのは、地面の凹みがひどい場所をスポットで修正する場合のみです。全体に撒く場合は、必ず「薄く均一に」を徹底してください。 目安として、1㎡あたり3〜5L程度の量を使用します。
おすすめの資材
- 川砂・山砂(洗い砂)
プロも多用する資材で、粒子が均一でサラサラしており、排水性・通気性の改善効果が最も高いのが特徴です。粘土質で水はけの悪い硬い土壌には特におすすめです。 - 芝生専用の目土
ホームセンターなどで市販されており、初心者にも使いやすい資材です。砂をベースに、土壌改良材(ピートモスなど)や肥料成分、サッチ分解菌などが配合されているものもあります。排水性と保水性・保肥性のバランスが良いのが特徴です。
よくある失敗と対処法
肥料焼けで芝が黄ばむ・枯れる
肥料の撒きすぎや、撒いた後の水やり不足が原因で「肥料焼け」を起こすことがあります。また、芝生が弱る真夏(7月〜8月)の施肥も避けましょう。対処法は、規定量を守り、散布機で均一に撒くこと、そして施肥の直後には必ずたっぷりと散水することです。
目土が厚すぎて芝が弱る
目土を厚くかけすぎると、芝生が窒息して弱ったり、枯れたりします。全面に撒く厚さは必ず5mm以内を守りましょう。また、目土の後は土が乾燥しやすいため、春の作業後は根付くまで水やりをしっかり行うことも大切です。
根腐れやカビが発生する
粘土質の土を目土に使ったり、サッチが溜まったまま目土をしたりすると、水はけや通気性が悪化し、根腐れやカビの原因になります。目土には川砂系の排水性が良い資材を選び、作業前には必ずサッチ除去を徹底しましょう。
まとめ
きれいな芝生は、適切な時期の適切な手入れによって維持されます。芝生の手入れの基本は、春と秋の「目土」と「施肥」です。
春(3月〜5月)は、芝生の芽出しを促進するため、窒素(N)が多めの肥料を与え、冬のダメージを補修する目土を行います。秋(9月〜10月)は、冬越しに備えて根を強化するため、リン酸(P)とカリウム(K)が多めの肥料を与え、根を保護する目土を行います。どちらの季節も、作業は「芝刈り・サッチ除去」を事前に行い、「施肥」をしてから「目土」を撒くのが最も効率的です。
特に目土は、厚くかけすぎないこと(3〜5mm目安)が最大のポイントです。この春と秋の定期的なケアを続けることで、雑草が生えにくく、病気にも強い、青々とした芝生を維持できます。ぜひ、次のシーズンから実践してみてください。



