一覧に戻る

ムスカリ 球根の植え時期と植え方

春になると、ブドウの房のような青や紫の小さな花を咲かせるムスカリ。その可憐な姿に反し、非常に丈夫で植えっぱなしでも育つため、ガーデニング初心者にも人気の球根植物です。

 

しかし、いざ育てるとなると「球根はいつ植えるのが正しいの?」「植えっぱなしで本当に大丈夫?」といった疑問も出てきます。

 

本ブログでは、造園・ガーデニングのプロとして、ムスカリの球根を植える最適な「時期」と「植え方」を中心に、植えっぱなしでも翌年きれいに咲かせるための管理のコツを分かりやすく解説します。

ムスカリとはどんな植物?

ムスカリは、地中海沿岸から南西アジアを原産とするキジカクシ科(旧ユリ科)の球根植物です。ブドウのような花姿から、英語では「グレープヒヤシンス」とも呼ばれます。日本での開花時期は3月〜4月頃。チューリップなどより少し早く咲き始め、春の訪れを教えてくれます。

 

ムスカリの魅力は、その丈夫さにあります。耐寒性が非常に強く、病害虫の心配もほとんどありません。一度植え付ければ、数年間は植えっぱなしでも自然に増え、毎年花を咲かせてくれる手軽さが人気の理由です。

ムスカリ球根の植え付けは「秋」が鉄則

ムスカリを確実に咲かせるために最も重要なのが「植え時期」です。ムスカリのような秋植え球根は、冬の寒さに一定期間あたることで花芽が作られる性質(休眠打破)を持っています。

最適な時期は10月~11月

植え付けのベストシーズンは、夏の暑さが和らぎ、地温が15℃前後に下がる10月上旬から11月下旬です。この時期に植えることで、本格的な冬が来る前に土の中でしっかりと根を張ることができ、春に花を咲かせる準備が整います。

植え付けが早すぎると(9月など)

まだ地温が高いと、球根が暑さで弱ったり、腐ったりする原因になります。

植え付けが遅くなると(12月以降)

根を張る時間が足りないまま寒さを迎えるため、球根が消耗し、春に花が咲かない、または開花が大幅に遅れる原因となります。

「春」に植えても咲かない理由

園芸店では春に花の咲いたポット苗が売られることもありますが、球根を春に植えてもその年には咲きません。 前述のとおり、冬の寒さを経験していないため花芽が形成されないからです。ムスカリの球根は、必ず秋に植え付けましょう。

ムスカリの基本的な植え方

地植え・花壇|植えっぱなし栽培に最適

植えっぱなしで管理したい場合に最も適した方法です。

 

  1. 場所選び
    最も重要なのは「日当たり」と「水はけ」です。球根は湿気を嫌うため、水たまりができるようなジメジメした場所は避けましょう。 一日中よく日が当たる場所が理想ですが、午前中だけ日が当たるような半日陰でも育ちます。
  2. 植え付け
    深さは、球根の高さの約2〜3倍(ムスカリの場合は深さ5〜6cm程度)が目安です。間隔は5cmほどあけて植えますが、開花時のボリューム感を出すために密集させて植えるのもおすすめです。 球根の尖っている方(芽が出る方)を上にして植え付けます。
  3. 水やり
    植え付け直後に一度たっぷりと水を与えます。その後は、地植えであれば基本的に水やりは不要で、自然の降雨だけで十分です。

鉢植え・プランター|寄せ植えにおすすめ

ベランダなどでも気軽に楽しめ、他の春の草花との寄せ植えにも向いています。

 

  1. 用土
    水はけの良さが重要です。市販の「球根用の培養土」や「草花用の培養土」を使用するのが簡単です。
  2. 植え付け
    鉢の底には必ず「鉢底石」を敷き、水はけを良くします。 鉢植えの場合、球根の頭が少し見えるか見えないか程度(深さ2〜3cm)の「浅植え」にします。深く植えすぎると葉ばかりが茂る原因になることがあります。間隔は球根同士が触れ合わない程度(2〜3cm)で構いません。
  3. 【重要】植え付け後の管理場所
    植え付けた鉢は、必ず屋外で管理してください。室内の暖かい場所に置くと、冬の寒さにあたらず花芽ができないため、咲かなくなってしまいます。霜や強い北風が直接当たらない軒下などが最適です。

植えっぱなしで翌年も咲かせるコツ

ムスカリを翌年も元気に咲かせるためには、「花が終わった後」の手入れが最も重要です。「植えっぱなし」の場合でも、この作業だけは行いましょう。

花が終わったら「花茎」だけを切る

花が咲き終わり、茶色くしぼんできたら、花が咲いていた茎(花茎)だけを根元からハサミで切り取ります。これは、花をそのままにして種を作らせないためです。種に栄養が取られるのを防ぎ、その分の栄養を球根に蓄えさせることができます。

葉は枯れるまで絶対に切らない

この時、緑色の葉を一緒に切ってしまわないよう注意してください。葉は、光合成を行って栄養を作り、それを球根に蓄えるという非常に重要な役割を担っています。花が終わった後も、葉が緑色のうちは球根を太らせるための「栄養工場」として働いています。

 

葉が青々としている間に切ってしまうと、球根に十分な栄養が蓄えられず、翌年に花が咲かなくなる最大の原因となります。葉は5月〜6月頃になると自然に黄色く枯れてきますので、それまでは触らずに残しておきましょう。

植えっぱなしで球根は増える

ムスカリは分球(ぶんきゅう)といって、親球の周りに小さな子球ができて自然に増えていきます。植えっぱなしにしておくと、土の中で勝手に増えて群生していきます。

 

ただし、3〜4年植えっぱなしにして球根が密集しすぎると、土の中が窮屈になり花付きが悪くなることがあります。その場合は、葉が枯れたタイミング(5〜6月頃)で一度掘り上げ、球根を分けて植え直してあげると、再び元気に咲くようになります。

よくある失敗と対処法

花が咲かない

最も多い失敗は「花が咲かない」というものです。この主な原因は、植え付け時期の間違い、または花後の葉の扱いにあります。球根は必ず秋の10月から11月の間に植え付けましょう。また、花が終わった後、まだ緑色でのこっている葉を切ってしまうと、球根が太れず翌年花が咲きません。葉は自然に枯れるまで必ず残してください。

球根が腐る

「球根が腐る」失敗もみられます。これは水のやりすぎや、植えた場所の水はけの悪さが原因です。地植えの場合は基本的に水やりは不要ですし、鉢植えも土の表面が乾いてから与えるようにし、常に土が湿った状態を避けることが大切です。

葉ばかり茂る

「葉ばかり茂る」場合は、球根を深く植えすぎているか、肥料(特に窒素)を与えすぎていることが考えられます。ムスカリは基本的に肥料がなくても育ちます。鉢植えの場合は、球根の頭が隠れる程度の浅植えを心がけましょう。

まとめ

ムスカリは、植え付け時期と花後の管理という2つのポイントさえ押さえれば、ほとんど手間がかからない非常に優秀な球根植物です。

 

大切なのは、必ず秋(10月〜11月)に植え付けること。そして、日当たりと水はけの良い場所を選ぶことです。花が終わった後は「花茎」だけを切り、球根を太らせるために「葉」は枯れるまで残します。

 

これだけで、ムスカリは植えっぱなしでも元気に育ち、自然に増えながら毎年春に可憐な花を咲かせてくれます。ぜひこの秋、ムスカリの球根を植え付け、手軽に美しい春のガーデンを楽しんでみてください。

 

そのほかの「よくある質問」はこちら